KUWAE lab.CMES Ehime University

2021-11-24 北海道の湖沼へ

愛媛県から遠く離れた北海道では、つい先日、初雪が観測されましたね。実は加研究室でも、先生と院生2名の3人で10月中旬に北海道へ調査に行っておりました。

目的は、北海道道東にある2つの湖沼、厚岸湖(あっけしこ)と網走湖(あばしりこ)の湖底に堆積した泥の採取です。私たちの今後の研究の基盤となる大切な試料となります。

調査地

一般的な堆積泥の採取方法をざっくり説明すると、アクリルの筒(コアパイプ)のようなものを湖底に突き刺して、筒の中に積層泥を抜き取ります。(これをコア試料や、堆積物コアと言います)
海底や湖底には、水中を漂う生物の死骸・糞、砂やその他汚染物質などあらゆるものが、常に静かに堆積し続けており、地上の地層のように、あるいは樹木の年輪のように層を成しています。これら堆積物をコアパイプの中に封じ込めるのです。

採取した堆積物コア
アクリルの筒の中に採取した海底泥が入っており、筒の上下にしっかりと蓋をして密閉します。

文章にすると簡単な事に思えますが、コア試料の採取は意外と難易度が高いです。重要なのは、コアを堆積泥の中から抜き取る時に、層が乱れないように慎重に行う事です。空気が混入したり、層が斜めになってしまったら失敗です。何回も繰り返し、「乱れていない堆積物コア」が採取できるまで繰り返します。

そのためには潮の流れや風向きを読んでの船の操舵と(船でその地点に留まっておくことはかなり難しい)、コアパイプを海底に落とすタイミング、引き上げる時のメンバーの調子を合わせること、など、上手くいくための条件が揃うことが肝心です。

さて、厚岸湖の調査では、従来の方法とは異なる、新しいコア試料の採取方法を試みました。

というのは、去年も厚岸湖の調査を行ったのですが、通常のコア試料採取の方法(ここでは詳しく書きませんが、自重で湖底の泥に貫入させて試料を取る方法です)では上手く泥が採取できず、採取方法を見直す必要がありました。厚岸湖は水深が70㎝と非常に浅く試料の採取がしやすい湖なのですが、堆積層が固いので、前回の調査ではアクリルの筒を湖底より30~40㎝までしか突き刺す事ができませんでした。

そこで今回は、硬い堆積層に対抗するべく「杭打機」を使う事としました。ある程度人力でコアパイプを湖底に差し込んだ上で、さらに杭打機の機械の力を借りてコアパイプを湖底に貫入させるという方法をとりました。コアパイプを引き上げる時に金具が外れてうまく引き上げられないなどのトラブルもありましたが、新しい手法で、なんとか必要な深度(湖底より150㎝)までの試料を確保する事ができました。

今回新たに開発した、厚岸湖でのコア試料取得の方法
厚岸湖での採取風景。左からM2倉田さん、加先生、協力して頂いた厚岸臨界実験所の職員の方と船長。
加先生が持っているのが杭打機、その下にあるのが試料採取前のアクリルの筒です。

研究や実験を進めていくと、想定していたように上手くいかない事がよく起こります。今回のように、どこが問題だったのかを把握し、改善するという繰り替えしで、研究の精度を上げていきます。

今回の調査では厚岸湖、網走湖ともに求めていた試料をとることができ、無事、調査を完了することができました。今後はこれらの試料を使って、堆積物中の年代を調べたり、厚岸湖のイトウという絶滅危惧種の動態(個体数の変動)を調べたり、網走湖の水産資源を支えるワカサギの動態を調査する予定です。

(この記事の写真や資料はM1(院生1年)の中根快さんに提供して頂きました。ありがとうございました!)

記|白鷹

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